事業者向けの補助金を探す際、「いくらもらえるか」に目が向きやすいものです。しかし、事業を進めるには、対象外経費を含む自己負担と、入金前に支払う資金の確認が欠かせません。
持続化補助金第20回は、採択された時点で資金が振り込まれる制度ではありません。この記事では、個人事業主や小規模法人が投資を判断する前に整理したい、補助率、自己負担、入金までの工程を解説します。対象事業者の条件は、申請条件の記事をご覧ください。
補助率2/3と上限50万円の意味
第20回の基本補助率は2/3、基本補助上限は50万円です。補助対象経費(補助金の計算対象として公募要領で認められた支出)に補助率を掛けた額が、上限まで補助される仕組みです。支出した費用が無制限に2/3補助されるわけではありません。
次の表は、対象経費を税抜で整理し、基本枠・補助率2/3を適用する単純な例です。経費区分の上限や対象外費用がない場合を前提とします。
| 対象経費 | 2/3の計算結果 | 基本枠の補助金額 | 対象経費部分の自己負担 |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 20万円 | 20万円 | 10万円 |
| 75万円 | 50万円 | 50万円 | 25万円 |
| 150万円 | 100万円 | 上限50万円 | 100万円 |
150万円の投資なら自己負担は50万円、と考えてしまうと資金不足につながります。基本枠の上限を適用すると、この例では対象経費部分の自己負担は100万円です。
最大250万円は、条件を満たす場合の上限
インボイス特例は上限50万円の加算、賃金引上げ特例は上限150万円の加算で、両特例を満たす場合は合計上限250万円となります。賃金引上げ特例の赤字事業者については、条件により補助率3/4となります。
これらはすべての事業者が選ぶだけで使えるものではありません。申請時の条件や必要書類だけでなく、事業終了時の要件も確認します。特例を満たせなかった場合の影響を理解してから、投資額を決めてください。
補助金の最大額に合わせて支出を増やすのではなく、事業に必要な投資と無理のない資金計画を先に考えることが大切です。
見積書の総額がすべて補助対象とは限らない
見積書には、対象になる部分と対象外の部分が混在することがあります。目的が合わない工事、汎用性が高く対象外となる物品、内容不明の費用などを確認し、対象経費を整理します。
申請書類や実績報告(補助事業の実施内容と支出証拠を事務局へ提出する手続)書等の作成・送付・手続の費用も補助対象外です。専門家への支援料は、補助金で賄う前提にせず、別の自己負担として計画します。
課税事業者の場合は、原則として消費税等を除いて補助対象経費を整理します。補助金の計算に入らない税額でも、業者へ支払う段階では資金が必要です。見積書の税込総額と、申請する対象経費を分けて確認してください。
第20回は経費区分ごとの上限にも注意
第20回では、広報費の補助金交付申請額の上限が30万円(税込)、ウェブサイト関連費も補助金交付申請額30万円(税込)が上限です。それぞれ単独の申請もできません。
全体の上限が50万円、特例で250万円であっても、各区分の上限がなくなるわけではありません。広告を中心に予算を立てる場合は、第20回の広告予算の記事もご確認ください。
補助金を受け取るまでの工程
| 段階 | 事業者が確認すること |
|---|---|
| 申請 | 計画・経費・対象条件を確認して提出 |
| 採択 | 採択だけでは発注できない |
| 交付申請・交付決定 | 詳細見積書等を提出し、交付決定日を確認 |
| 事業実施・支払い | 期間内に実施し、証拠書類を整理 |
| 実績報告・確認 | 実施内容と支払いを報告し、不備に対応 |
| 額の確定・請求等 | 確定した補助金額と請求手続を確認 |
| 入金後 | 所定の事業効果等状況報告に対応 |
実績報告の確認により対象外経費が見つかった場合などは、交付決定(採択後の経費確認を経て、補助事業へ着手できることを事務局が正式に決めること)時の金額より補助金額が少なくなることがあります。申請した額がそのまま確実に入金される前提で判断しないようにしてください。
入金までの資金繰りは支払日から考える
第20回の採択発表は2027年3月頃の予定です。交付決定までには採択後さらに概ね1~2か月かかる場合があります。事業実施期間は交付決定日から2028年3月31日までです。
入金日は一律に決まっていません。事業の完了、実績報告の提出と確認、額の確定、請求等の進行によって変わります。工事や広告の支払日から入金まで、手元資金が足りるかを確認します。
資金計画に入れたい項目
- 業者へ支払う税込金額と支払時期。
- 対象外となる経費と申請支援料。
- 工事中の休業など、事業の実施に伴う営業への影響。
- 入金までの期間に必要な通常の運転資金。
- 補助金額が減額された場合でも支払えるか。
必要に応じて金融機関へ相談する場合も、補助金の採択・交付決定・入金の予定を混同せず説明します。借入を必ず利用できるという意味ではなく、早めに資金の選択肢を確認するための準備です。
入金後も報告と書類保存が続く
持続化補助金では、事業終了から1年後の状況について、所定の事業効果等状況報告が必要です。報告未提出等は、今後の申請にも影響する場合があります。
関係書類は、補助事業終了日の属する年度の終了後5年間、保存する必要があります。税抜50万円以上の一定の設備や改装等は処分制限財産に該当する場合もあるため、入金後の用途変更や処分を自由にできるとは限りません。
賃金引上げ特例は第19回と指標が変わる
第20回の賃金引上げ特例は、第19回の「事業場内最低賃金(同じ事業場で働く従業員に実際に支払う時間給のうち最も低い金額)を50円以上引き上げる」という条件から、1人あたり給与支給総額(給料や賞与など、企業が従業員へ支給する給与の合計額)を年平均3.0%以上増加させる条件へ変更されています。賃金引上げ加点も、最低賃金を30円以上引き上げる条件から、1人あたり給与支給総額を年平均2.0%以上増加させる条件へ変わります。
比較するのは2027年4月~2028年3月と、その前年同月の12か月です。特例・賃上げ加点を利用する場合、補助事業終了予定日は2028年3月31日に設定します。給与、賞与、残業代等、算入する従業員の範囲やパートタイム換算などにも条件があるため、時給の上げ幅だけでは判断できません。
所定の目標設定と表明、実績報告時点での達成が必要です。特例の要件を満たさない場合は、上乗せ分だけでなく全体が交付対象外になる扱いもあるため、人件費と資金の計画を十分に確認してください。
よくあるご質問
補助金が入ってから業者へ払ってよいですか?
原則として、先に事業を実施し支払いを済ませて実績報告等を行う制度です。入金前に支払える資金の準備が必要です。
補助金は売上や利益の計算に関係しますか?
公募要領(補助金の対象者、経費、期限、申請方法などを定めた公式ルール)では、補助金の額の確定を受けた事業年度の収益として計上し、法人税・所得税の課税対象となる旨が示されています。実際の会計・税務処理は、税理士等と確認してください。
自己負担が少なければ、必要以上に投資してよいですか?
補助対象外費用や維持費も生じます。事業上の必要性、期待する効果、資金の余力を踏まえて判断することが大切です。
※本記事は2026年9月18日時点の第20回公募要領(第8版)に基づく解説です。
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