行政書士法人奈良総合事務所
補助金

新事業進出・ものづくり補助金は第1回が狙い目?採択率が高いと言われる理由と注意点

2026年9月30日から、第1回「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の電子申請受付が始まりました。補助金の支援現場では、新制度の第1回について「後の公募回より採択されやすいのではないか」「第1回は狙い目ではないか」という見方があります。

結論からいうと、第1回の採択率が高くなることは公式に発表されていません。応募件数も採択件数も確定していないため、現時点で採択率を断定することはできません。一方で、早い公募回から検討する実務上のメリットはあります。

本記事では、なぜ「第1回は採択率が高い」と言われるのか、過去の結果から何が分かり、何が分からないのかを整理します。

第1回が狙い目と言われる主な理由

新制度の認知が十分に広がっていない可能性

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、従来のものづくり補助金と中小企業新事業進出補助金の流れを引き継ぎ、3つの枠へ再編された制度です。制度名と要件が変わったため、過去制度を知っている事業者でも、第1回の公募に気付いていない場合があります。

申請受付期間も2026年9月30日から10月30日18時までと短く、公募要領(補助金の対象者、経費、期限、申請方法などを定めた公式ルール)を読み、GビズID(法人・個人事業主が複数の行政サービスへログインするための共通認証アカウント)、一般事業主行動計画、見積、市場調査、資金調達を1か月で揃えるのは簡単ではありません。準備済みの事業者に応募が限られれば、申請件数が抑えられる可能性があります。

ただし、従来制度から準備していた事業者が新制度へ移行することも考えられます。「新制度だから応募者が少ない」とは断定できません。

予算執行の初期段階という見方

補助事業では、制度開始直後は予算がまだ執行されていないため、後半回より採択余地が大きいのではないかという見方があります。ただし、第1回に割り当てる採択規模や枠別件数が明示されていない限り、予算残高だけで採択率を予想することはできません。

予算が大きくても応募額が大きければ採択件数は限られます。新事業進出枠とグローバル枠は最大9,000万円であり、1件当たりの申請額が高くなれば、同じ予算でも採択できる件数は少なくなります。

後の回ほど応募が増える可能性

第1回の採択事例が公表されると、制度の対象イメージが明確になり、次回以降の応募が増える可能性があります。また、第1回に間に合わなかった事業者が次回へ持ち越すことも考えられます。このため、準備できるなら早い回へ申請する方が競合を避けやすいという考え方があります。

一方、第1回は制度解釈の先例が少なく、申請者側も新しい審査基準へ対応しにくい面があります。後の回では採択結果や公表事例を参考にできるため、準備の精度を上げやすい利点があります。

過去の第1回採択率はどうだったか

旧・中小企業新事業進出補助金の第1回は、応募3,006件、採択1,118件、採択率約37.2%でした。第2回は約35.4%、第3回は約34.9%、第4回は約33.9%で、第1回が最も高い結果です。

公募回 応募件数 採択件数 採択率
第1回 3,006件 1,118件 約37.2%
第2回 2,350件 832件 約35.4%
第3回 1,212件 423件 約34.9%
第4回 1,499件 508件 約33.9%

数字だけを見れば第1回が最も高いものの、差は約1.8~3.3ポイントです。また、これは旧制度の結果で、新しい制度の結果ではありません。枠、補助率、上限、要件、予算配分が異なるため、今回も同じ傾向になるとは限りません。

従来のものづくり補助金でも、公募回ごとに応募件数と採択率は変動しています。第1回という番号だけで採択率を予測するのではなく、制度目的に合う計画を作ることが重要です。

「採択率が高い」と「採択されやすい」は違う

仮に全体の採択率が高くても、自社の計画が要件を満たさなければ採択されません。申請者の質が高い回では、採択率が高くても競争は厳しくなります。反対に採択率が低くても、市場、技術、収益、賃上げを具体的に示せる計画には採択の可能性があります。

本制度では、革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の目的が明確に分かれています。補助率や上限だけで枠を選び、事業内容が枠の趣旨と合わなければ評価されにくくなります。

第1回を検討するメリット

  • 新制度の公募開始時点から準備している事業者は、早く投資を開始できる
  • 採択後の交付決定を経て、2027年中の事業実施へ進みやすい
  • 競合企業より先に新市場へ参入できる可能性がある
  • 後の回を待つ間の設備価格上昇や事業機会の逸失を避けられる
  • 不採択でも、計画を見直して次回以降を検討できる

補助金の採択だけでなく、事業開始のタイミングを早められることが最大のメリットです。新市場には先行者利益がある一方、準備不足で急いで申請すると、採択後に設備、許認可、資金で行き詰まります。

第1回へ無理に申請しない方がよいケース

対象製品や顧客が決まっていない、設備見積がない、資金調達の見通しがない、GビズIDがない、一般事業主行動計画を公表していない場合は、締切だけを理由に急ぐべきではありません。

特に新事業進出枠では、補助下限750万円、補助率原則2分の1です。最低でも税抜1,500万円規模の対象投資が必要となるため、補助金がなければ実施できない過大投資は危険です。

採択可能性を高めるために優先すること

第一に、枠の選択です。技術的な新製品開発、新市場への事業転換、新しい国への輸出のどれが中心かを決めます。第二に、顧客と競合の調査です。市場規模だけでなく、購入意向、価格、販売方法を確認します。

第三に、数値の整合です。設備能力、販売数量、売上、粗利益、付加価値、給与を一つの計画にします。第四に、実行可能性です。設備納期、建築、許認可、人材、資金を補助期間内に収めます。

まとめ|第1回は検討価値が高いが、採択率は未確定

第1回は、新制度の認知、準備期間、予算執行の初期段階などから「狙い目」と言われることがあります。旧・新事業進出補助金では実際に第1回の採択率が後の回をわずかに上回りました。

ただし、今回の第1回採択率は、応募締切と審査が終わるまで分かりません。「第1回なら通る」という説明は正確ではありません。事業そのものが固まっている事業者にとって、早い回から挑戦する価値がある、と捉えるのが適切です。

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